病理診断科の医師転職事情は?
病理診断科の求人は他診療科目と比較すると、それほど多くはありません。その理由としては病理診断科の医師数が少ないこと、病理診断科を設置している病院が少ないことが挙げられます。ただ、地域の2次医療を担う基幹病院、国公立病院から民間病院などで募集が出るケースは少なくなく、一定のニーズはあると言えます。募集するのは病理診断科の医師が複数名いる病院、1名体制の病院、新規立ち上げ病院など様々です。
【病理診断科の医師数から見る転職事情】
厚生労働省の『医師・歯科医師・薬剤師統計の概況』p.11によると、病理診断科の医師数は2,093人(うち病院勤務:2,014人、診療所勤務:79人)となっており、他診療科目の医師数と比較しても少数であることがわかります。また、施設ごとの勤務内訳をみると、96%が病院勤務でクリニックなどの診療所勤務は稀であると言えます。そのため、病理医の転職先の選択肢としては病院がメインだと言っていいでしょう。
【病理診断科の求人状況】
厚生労働省が2020年3月に発表した一般職業紹介状況によると、医師全体の有効求人倍率は3.34倍、単純計算で1人あたり約3求人ある状態で、医師のニーズは非常に高いことがわかります。加えて、厚生労働省の『病院等における必要医師数の実態調査の概要』p.9によれば、病理診断科の必要求人医師数は1.13倍で、医師全体の必要求人医師数が1.11倍であるのと比較すると、やや高い数値であることがわかります。これらのデータから医師不足を背景に医師のニーズは非常に高く、加えて病理診断科の医師のニーズも高いことがわかります。つまり、病理診断科の医師の転職は比較的容易で、転職しやすい状況にあるというわけです。
具体的な病理診断科の求人や年収事情は?給料UPを狙うには?
まずは病理診断科の募集がどれくらい出ているのか、医師特化の転職サイトの求人数を参照しチェックしていきましょう。
■リクルートドクターズキャリア
病理診断科の求人数:37件(うち一般病院など37件、クリニック0件)
■医師転職ドットコム
病理診断科の求人数:119件(うち一般病院など110件、クリニック9件)
■マイナビドクター
病理診断科の求人数:11件(クリニック0件)
3サイト合計で167件の求人がありますが、他診療科目と比較すると求人数は少ないです。また、企業やクリニックの求人はあるものの、一般病院での募集が集中しており、施設ごとにみると選択肢はやや少ないと言えます。ただ、医師数が少なく、求人が少ないからこそ、病理診断科でキャリアを積んでいる医師は希少価値が高く、採用率が非常に高いと考えられます。そのため、何件も面接に行かずとも、転職成功できる可能性が高いというわけです。
【具体的な病理診断科の内容、特徴】
病理診断科の求人の内容、特徴は以下のとおりです。
・時短勤務、週4日勤務可、当直なし求人が多数
・高年収の求人が多い
・病理診断科経験者のみを採用
病理診断科は医師数の少なさから、病院が求人を出しても応募がないケースが非常に多いです。そのため、時短や週4日勤務を可能にし、女性医師も働きやすい条件に整えたり、ベテラン医師に応募いただけるように高年収を提示するなど、好条件求人が目立ちます。また、基本的に他診療科目よりも当直免除対応が多く、勤務時間に融通が利きやすい求人が多いです。
そして、病理診断科は他診療科目と業務内容が大きく異なるため、他科目からの転科が難しく、経験者を求める傾向が強いです。つまり、経験者が優遇されるため、競争倍率が極めて低く、採用されやすい状況にあるというわけです。
病理診断科の医師の年収事情
病理診断科の医師の平均年収は1171.5万円(その他に含まれる)で、年収1000万円以上は68.9%となっています。(『勤務医の就労実態と意識に関する調査』p.30を参照)他の診療科目も含まれるため、病理診断科の医師のみの平均年収ではありませんが、目安としては上記の年収が参考になります。他方、医師全体の平均年収は1261.1万円であり、他診療科目の医師と比較すると、病理診断科の医師の平均年収はやや低いと言えます。
ただ、転職サイトの求人での提示年収は約80%が年収1200万円以上、約20%が年収1600万円以上であり、平均年収より高い水準であるのがわかります。そのため、病理診断科における専門性、経験・スキルをアピールできれば、年収アップは比較的容易だと言えます。
病理診断科の求人でチェックすべきポイントは?
病理診断科の求人のほとんどが病院から出されています。そこで、病理診断科の医師の募集をしている病院の求人でチェックすべきポイントをご紹介します。そのチェックすべきポイントは主に以下のとおりです。
・同僚医師の専門領域、症例数
・他科との連携体制は整っているか
・病理科の専門医を取得できるか
まず、募集病院で病理診断科の医師がいる場合、その医師の専門領域を求人でチェックしておきましょう。他医師の専門が細胞診断なのか、病理組織診断なのか、術中迅速病理診断なのかなどを把握することで、ご自身の専門性が生かせるか、もしくは業務のサポートをしていただけるか、キャリアモデルとして参考になるかなどを判断できます。もし求人で確認できない場合は面接で質問するのがいいです。
また、病理診断科は他診療科目の医師との連携が欠かせないため、連携体制が整っているか、求人でチェックしてください。その病院の理念や医療への取り組み方、医院長の人柄・理念、病院の体制をチェックすることで、連携体制がしっかりしているか判断できます。仕事が進めやすいか、チームで医療に臨めるかの目安になるため、チェックしておきたいです。
そして、病理科の専門医を目指すなら、専門医取得可能な施設かを求人でチェックしてください。加えて、病理組織診断数や術中迅速診断数などの症例数や指導・教育体制、他科との連携体制も求人でチェクすることで、専門医をスムーズに取得できるか把握できます。
病理医の転職体験談
ここまで病理診断科の医師の転職事情や求人内容、年収事情について解説しました。では最後に病理診断科での転職体験談をご紹介します。2ケースの転職体験談をご紹介しますので、是非ロールモデルとして参考にしてください。
■病理診断科の新規立ち上げに興味!一般病院に(男性、39歳)
私は前職で医局派遣にて病理診断を担当、年収1100万円、週5日+当直月4回で勤務していました。ただ、医局派遣でころころ現場が変わることに嫌気がさし、転職を考えるようになりました。そして、40歳に目前に、医局の人事次第で現場が変わること、当直が月4回もあること、年収が低いことも合わさって転職に踏み切りました。
まずは転職エージェントに登録し、病理診断科の求人を探していただきました。しかし、希望にマッチする求人が見つからず、条件緩和しないといけないと考えていました。そこに、23区内の病院に病理科が立ち上げるため、専門医をすぐにでも採用したいという求人が出てきたとコンサルタントから連絡をいただきました。そして、ここしかないとすぐに応募を決め、採用までスムーズに決まりました。転職活動当初は新規メンバーとして働こうとは思ってもいませんでしたが、今までの経験を生かすことができるので、即決しました。今は当直がなく、年収も1500万円にアップしたので、非常に満足しています。
■プライベートを重視して!病理診断科のキャリアを継続(女性、42歳)
前職では一般病院で病理診断を担当、年収1200万円、週5日+当直月5回で勤務していました。しかし、病理医が私一人ということもあり、非常に忙しく残業もほぼ毎日でした。そのため、働き方を変えたい、プライベートにもっと時間を使いたいと考え転職を決意しました。
最初は自分で求人を探していたものの、求人が見つからなかったので、転職エージェントを利用しました。担当のコンサルタントに転職相談し、求人を探していただいたところ、2件の求人を紹介してもらいました。うち1件は退職の補充採用であるため、前職と環境は変わらないことをお伺いし、もう1件のみを受けることにしました。そして、年収は1300万円、当直なしの条件で無事採用をいただきました。少ない求人の中での転職は非常に不安でしたが、コンサルタントさんが必死に求人を探してくれて、希望通りの転職が叶い安心しています。