耳鼻科の医師転職事情は?
耳鼻科の医師求人は他の診療科と比べるとやや少ない傾向にあります。また、求人の多くが首都圏に集中しており、地方求人が少ないのが現状です。ただ、求人は病院、クリニックがほぼ半々で、勤務条件、提示年収などのバリュエーションは豊かです。地方も少なからず各施設が募集を出しており、耳鼻科医数・転職者数が少ないからこそ、採用されやすく転職しやすい状況にあると言えます。
耳鼻科の医師総数と施設別医師数から見る転職事情
厚生労働省の『平成 30(2018)年 医師・歯科医師・薬剤師統計の概況』p.11によると、耳鼻科の医師数は9519名、そのうち病院勤務は4006名、診療所は5513名であることがわかっており、ここ20年間その数は横ばいです。耳鼻科の求人数について病院、クリニックがほぼ半々であることもうなずけるでしょう。また同調査では、耳鼻科医の約6割が50歳以上で、医師の高齢化が進んでいることが明らかになっています。一般的な転職市場では、高齢化が進んでいる業界・業種の採用意欲は高く、求人側の採用活動は活発になります。この状況は耳鼻科医にも当てはまると言え、転職成功するチャンスは大いにあると言えます。
耳鼻科の求人状況
厚生労働省が2020年2月に発表した一般職業紹介状況によると、医師全体の有効求人倍率は3.41倍で、非常に高い数値を記録しており、医師は不足状態にあることがわかります。また、厚生労働省の『病院等における必要医師数の実態調査の概要』p.9によれば、耳鼻科の必要求人医師数は1.10倍で、医師全体の必要求人数が1.11倍であることと比較と、それほど差はないことがわかります。つまり、耳鼻科は医師全体の状況と変わりなく、医師数が不足しているというわけです。そして、耳鼻科医も医師全体と差異なく、有効求人倍率が非常に高いことが推測され、転職しやすい状況にあります。
具体的な耳鼻科の医師求人は?
具体的に耳鼻科にはどのような医師求人があるのか、大手転職サイトを参照し、ご紹介します。
大手転職サイトの求人状況
ここでは医師特化の転職サイト3社の求人数と具体的な待遇について見ていきます。まず、耳鼻科の求人数は転職サイト別で以下のとおりです。
リクルートドクターズキャリア
耳鼻科の求人数:132件(うち一般病院85件、クリニックなど47件)
エムスリーキャリア
耳鼻科の求人数:366件(うち一般病院112件、クリニックなど254件)
マイナビドクター
耳鼻科の求人数:99件(うち一般病院52件、クリニックなど47件)
転職サイトによって多少異なりますが、100件~300件ほどの求人を掲載しており、一般病院とその他施設の求人はほぼ半々の所が多いです。また、それぞれの転職サイトで耳鼻科医の求人を見ると、以下のような特徴があるのがわかります。
・求人の9割強が年収1000万円以上、約5割が1500万円以上
・週4日勤務、時短勤務などの求人が多数
・当直なし求人が半数以上
・求人の3〜5割が関東・都市圏
耳鼻科の医師の平均年収は1078.7万円(眼科・頻尿器科・皮膚科含む)で、23.2%は年収1000万円以下となっています。(『勤務医の就労実態と意識に関する調査』p.30を参照)平均年収から考えると、求人で提示されている年収は高い水準であり、高待遇での転職が望めると言えます。有効求人倍率が高い状態であれば、求人側は高い年収や高待遇でも募集をかけたいと考えているため、提示年収の水準は高くなっているというわけです。また、週4日勤務、時短勤務が可能、当直なしの求人が多数で、柔軟な働き方のできる病院・クリニックが多いことがわかります。医師の働きすぎが問題になっていることはご周知のとおりですが、働き方の改善を急ぐ病院が多く、その改善が求人にも反映されているようです。
一方、転職サイトによって差はあるものの、耳鼻科の求人の3割〜5割が関東・都市圏に集中しています。地方の求人は少ない傾向にあり、選択肢はやや少ないです。ただ、地方でも年収や勤務条件が良好な求人が多く、希望通りの転職を叶えられる可能性もあると言えます。
耳鼻科の医師求人でチェックすべきポイントは?
耳鼻科の求人でチェックすべきポイントは主に以下の5つです。
・提示年収、勤務条件
・年齢構成、人数、医局の有無
・症例数や外来患者数、受持ち患者数
・専門医認定の施設か
それぞれ詳しくご紹介します。
・提示年収、勤務条件
耳鼻科求人の提示年収は9割が1000万円以上、5割が1500万円以上です。そこで現在の年収と比較し、年収アップできる求人がどれくらいあるのか、チェックしましょう。また、勤務条件についてはご自身の転職希望とマッチする求人をピックアップしてください。週4日勤務や時短勤務、土日休暇など多様な希望があるでしょう。そこで、求人には必ず勤務条件が載っているので、自分にマッチする勤務条件であるか、チェックするのがおすすめです。年収重視、勤務条件重視の二者択一ではないので、どちらの希望も網羅している求人を先にチェックしましょう。もし選択肢が少なく、該当求人が10件以下の場合は妥協できる点は譲歩し、求人を再度チェックするのが良いです。
・年齢構成、人数
人間関係が転職理由の一つであれば、求人で年齢構成や勤務している医師の人数はチェックしてください。ご自身の年齢と求人の年齢構成が合わない、同じ年齢層が少ないとなると、人間関係でつまずく可能性が高くなります。年齢構成や医師の人数を求人でチェックすることで、働きやすい環境か、ストレスが少なく働けるか、推測できるというわけです。
・症例数や外来患者数、受持ち患者数
医師の転職理由で、常にトップ3に挙がるのが多忙さ、働き方です。そこで、今までの働き方を変えたい、柔軟な働き方をしたいと希望するなら、求人で勤務日数や残業時間、当直日数をチェックするとともに、症例数、外来患者数、受持ち患者数をチェックするのがおすすめです。医師の多忙さは患者数によって異なる場合がほとんどなので、医師数に対して患者数が適切かどうか、求人でチェックしてみるのが良いでしょう。
・専門医認定の施設か
耳鼻科の専門医を取得したい方は、専門医認定の施設か求人でチェックしてください。専門医認定の施設は医局関連病院が多いですが、独自に募集している医療機関もあります。加えて症例数や指導体制、専門医の取得実績などをチェックしておくことで、専門医が取得しやすい環境か把握することができます。
耳鼻科医の転職体験談
ここまで、耳鼻科の具体的な求人状況、求人のチェックポイントについてご紹介してきました。では、最後に耳鼻科医の転職体験談をご紹介します。
医局を退局、年収アップで家庭を支えたい(男性、37歳)
前職では、一般病院で外来、病棟管理、手術を担当していました。年収は900万円、週5日勤務でしたが、当直や残業、休日出勤が多く、勤務環境を変えたいと考え、転職に踏み出しました。転職希望としては主に「オンとオフがはっきりしている勤務環境」「年収アップ」の2つでしたが、希望条件どおりの医療機関が4ヶ所見つかり、面接を受けることにしました。4ヶ所の医療機関の中でも、年収希望、勤務希望、家庭を持っており子どもがいる状況をしっかり汲んでくれる病院があり、非常に魅力に感じました。また、条件だけでなく、理事長や病院の理念、方針が自分の考えや仕事への向き合い方とマッチし、その病院で働くことを決めました。面接に行った4ヶ所はいずれも素敵な職場だと思いましたが、「この病院で働きたい!」と素直に思えたことが決め手です。現在は年収1800万円で、耳鼻科の外来を担当しており、家庭と両立でき非常に良い環境で働けています。
独立に向けてキャリアアップしたい(女性、31歳)
前職では年収1000万円で、外来、病棟管理、手術を担当していました。そこから医師になった時からの夢であった開業に向けて、よりノウハウを学ぶために転職を決意しました。「専門的なノウハウをもった同僚・先輩がいる」「開業に向けた準備時間をとりたい」という希望をもとに、転職エージェントを利用し求人を探しました。転職エージェントの担当コンサルタントに相談したところ、「開業支援の実績がある病院がいいのではないか」とご提案いただき、よりマッチする求人をご紹介していただきました。そして2ヶ所の面接を受け、今の職場に採用いただき、転職を決めました。今の職場は女性の医院長で、実際に開業医として活躍されている先生でしたので、自分のモデルケースになると考えたのが決め手でした。独立に向けてしっかり頑張りたいと日々学び、仕事に専念しています。
クリニック勤務でプライベートの時間も取りたい(女性、36歳)
前職では医局派遣にて総合病院に勤務し、年収1000万円、外来、病棟管理、手術を担当していました。専門医も取得でき、スキルアップできる環境でしたが、月4回の当直、毎日のオンコール待機があり、肉体的な疲労から転職を決心しました。そのため、当直やオンコールがない、年収アップを希望に転職活動を進めていました。しかし、現職のまま転職活動をするのは時間的、体力的にも非常に辛く、転職エージェントを利用しました。その結果、求人紹介や面接日程の調整、条件交渉などを任せることができ、希望にマッチする職場に出会うことができました。今は年収1500万円、耳鼻科クリニックで外来を担当しています。転職エージェントを頼らなければ、非常に辛い状況で転職活動しないといけなかったので、非常に助かりました。また、今の職場は当直なし、オンコール待機なしで、残業時間も少なくプライベートの時間が取れ、希望通りの働き方ができています。