麻酔科医師は全国的に需要が非常に高く、常に求人があり、多くの病院で募集をかけています。また、他の診療科の医師に比べて麻酔科医は転職の割合が高いので、概して変動の多い業界と言えるでしょう。そのため、病院側の採用担当者は多くの麻酔科医師を見てきていますし、どんな人が自分の病院によって必要なのかをシビアに見ます。希望する病院に就職するためにも、採用基準がどんなものかを把握して、あらかじめ対策を練っておくのは大切なことです。
医師として当然必要なのは、能力と経験。とりわけ麻酔科医師は腕一本で食べていく、と言われるほど、この面での重要性は高いものがあります。特に、留学経験が他の診療科の医師よりも高いこともあり、様々な経験をしている医師ほど状況対応能力が高く、信頼される傾向にあります。そのため、就職・転職活動の際にも経験が重視されるという採用基準を思いに留めておくと良いでしょう。たとえ、自分に留学経験や有名な大病院で勤めた経験がなくても、以前の勤務先で働いていた同僚にそのような人がいたなら、そこからいろいろ学ぶことができた、ということも伝えられます。大事なのは、いかに自分について積極的にアピールするかなのです。
また採用基準として覚えておきたいものは、医師の資質や性格です。麻酔科医はたいてい手術チームの一員としての働きを見込まれて採用されるわけですから、チームワークの取れる人であることが重要視されます。その点で、コミュニケーション能力などを面接の際には見られることがありますので、さわやかな態度で積極的な意見を述べることを心がけるようにしましょう。 あと麻酔科医に大切なのは冷静さです。手術中に万が一患者さんが急変しても、麻酔科医は冷静に体の状態を少しでもあるべき状態にするべく、必要な薬品を投与するなどして対応しなければなりません。麻酔科医が混乱してしまっては、助かるものも助からないのです。命の重さを常に感じ、最後まで患者さんのために行動できることこそ、麻酔科には必要です。
そして、麻酔科に必要とされる資質として、忍耐力も求められます。チーム医療はチームとして一つの手術に取り組み、自分の担当の部門を全うすることで成果をだすことで達成感を感じることができます。これはチーム医療のメリットです。一方で、人の命を預かる手術だからこそ、チームの一員として麻酔科医は医師や看護師からキツイことを言われることもあります。そのたびに、落ち込んだりケンカをしていたのでは仕事になりませんから、流せるところは流したり、耐えるところは耐えるなど、忍耐力が求められるのです。また、チームの一員として手術を成功させるためにも、コミュニケーション能力は必要でしょう。適切なコミュニケーションを取ることで、手術中の意思の疎通もスムーズになります。
さらに、大抵の病院では麻酔科医の仕事は相当量あります。一日に行う手術の数は他の診療科の医師とは比べものにならないほど多くなります。そのため、健康で体力が相当ある人が当然好まれます。時には、長時間に及ぶ手術を続けて行うこともありますし、一瞬たりとも気が抜けないですので、病院側もそうした点を注意して見ています。履歴書の趣味・特技の欄、また面接の際の質問で、スポーツを行っていることやトレーニングを行っていることを付け加えておくなら、その面での印象を良くすることができます。ストレスを溜めないためにも、そういった少ない休みでしっかりリフレッシュできるような趣味を持っている人もいいでしょう。また、休みが少ないために、仕事そのものを楽しむことができたり、ストレスを感じにくいということも大切です。ちょっとした空き時間でも気分をリフレッシュすることができれば、日々に感じるストレスはずいぶん少なくなるものです。
このように、当然のことながら医師としての技量や経験が何よりも採用基準の中では重要視されますが、それと同時に資質という面でのチェックも厳しいものがあります。麻酔科医は引く手あまただとはいえ、転職が多い分野で、条件の良い病院ならそれだけ競争も激しくなるというのは覚悟しておきましょう。